2022年度(令和4年度)税制改正により、不動産に関する制度が変更される可能性があります。ここでは、住宅ローン控除の改正を中心にポイントをお伝えします。
昨年(2021年)の住宅ローン控除
2021年までの住宅ローン控除
住宅ローン控除とは、住宅ローンを利用してマイホームを購入した人のための減税制度です。2021年は、原則10年間に渡って年末の住宅ローン残高の最大1%が所得税・住民税から控除。最大控除額は400万円(長期優良住宅等は500万円)でした。
2021年度税制改正により控除期間が13年に延長
2021年度税制改正では、原則に「10年」という住宅ローン控除の期間が、一定の要件を満たした場合に限り「13年」に延長しました。延長にいたったのは、新型コロナウイルス蔓延による住宅需要の低下を懸念してのことです。
2022年住宅ローン控除の改正点
住宅ローン控除は、もともとマイホームを購入する人の金利負担軽減のために導入された制度。近年では、 実際の金利負担より控除額のほうが多い =住宅ローンを組んだほうが得をするという現象(逆ザヤ)が起きており、この点を是正するために2022年度税制改正で大きくテコ入れとなりました。
また今回の改正の注目点の1つとして、住宅の性能によって控除額に大きな差が生じたこともあげられるでしょう。住宅においても省エネ性能の向上が求められています。そのため、2022年度税制改正では、良質な住宅に対して「上乗せ措置」が講じられることになります。
控除率
住宅ローン控除の控除率ですが、2022年度税制改正により「1%」から「0.7%」に縮小します。今回は逆ザヤ是正のための減税規模縮小となりますが、それでも銀行の適用金利によっては、完全に逆ザヤ解消とはならない見込みです。控除率については、縮小後、2025年末まで据え置かれます。
控除期間は据え置き(13年間)
住宅ローン控除の控除期間は、原則10年間です。しかし、消費税増税およびその後、新型コロナウイルスの影響により、2020年度、2021年度は控除期間が「13年」に延長しました。2022年度も控除期間「13年」は2023年まで据え置かれます。
2021年度は、延長した「3年間」の最大控除額はそれまでの10年と比較して少なくなりましたが、2022年度税制改正により、控除率は13年間通して一律0.7%となります。ただし、13年への延長は新築住宅および不動産業者が再販する消費税課税住宅のみ。一般の売主が売却する中古住宅は、これまで同様、控除期間は「10年」です。
借入限度額は3,000万円に縮小
2022年度税制改正では、控除率が「0.7%」に縮小するのみならず、借入限度額が「3,000万円」に引き下がります。3,000万円の0.7%ということになりますので、年間最大控除額は「21万円」にまで引き下がります。これは、現行制度と比較して、半減近くの縮小です。
借入限度額「3,000万円」は、2023年までの2年間の措置。2024年、2025年は、借入限度額が「2,000万円」とさらに縮小します。
ただし、ローン残高上限「3,000万円」というのは、省エネ基準に適合していない一般住宅のみ。認定住宅やZEH住宅等、良質な住宅は、以下のように「借入限度額」および「控除期間」において上乗せ措置が講じられます。
また、消費税が課税されない中古住宅の取得、あるいは住宅の増改築における借入限度額は「2,000万円」とし、控除期間も「10年」となります。ただし、中古の認定住宅等一定の省エネ性能を満たした住宅においては、借入限度額が「3,000万円」、控除期間は同様に「10年」です。
所得制限の引き下げ
住宅ローン控除は、これまでも所得制限が設けられていました。2021年は、控除を受ける年の合計所得金額は「3,000万円以下」と規定されていますが、この点が「2,000万円以下」に引き下がります。
また、床面積が40㎡以上50㎡未満の住宅については所得制限が「1,000万円以下」となります。
中古住宅の築年数要件の緩和
2021年まで、住宅ローン控除は一定の築年数を下回る中古住宅にしか適用されませんでした。(耐震性を証明する書類がある場合は含まず)「一定の築年数」とは、以下の通りです。
- 木造:20年
- 耐火構造:25年
この点が、2022年度税制改正により「昭和57年以降に建築された住宅=新耐震基準適合住宅」に緩和されます。
たとえば、2021年時点で築36年の1985(昭和60)年築のマンションは、これまで耐震基準適合証明書・既存住宅性能評価書・既存住宅売買瑕疵保険付保証明書のうちいずれかの書類がなければ住宅ローン控除の対象となりませんでしたが、2022年度からは書類による証明なしで対象となります。
住民税からの控除上限額の引き下げ
住宅ローン控除は、原則的に所得税から控除される制度です。ただし、所得税から控除しきれない分は住民税からも「一部」控除されます。
この住民税の「一部」についても、2022年度税制改正で引き下げられました。
その他のポイント
贈与税と相続税の一本化
現行制度では、相続発生から3年以内の贈与は相続扱いになります。言い換えれば、3年超前の贈与は相続に該当しないわけです。
また現状、贈与税は「暦年贈与」という年間の贈与額によって税額が決まる方式がとられています。年間110万円を超える贈与に対して、贈与税が課税されるということです。そのため、相続が発生する前から小分けに「生前贈与」することで相続税対策する方も多くいます。2021年度の税制改正では、「資産移転を公平にすべき」という観点から「相続税と贈与税の一体化」の可能性を示唆していました。具体的に検討されているのは、以下のことです。
- 贈与税の暦年課税制度の在り方を見直す
- 相続発生から10年あるいは15年など、今よりはるかに長い期間の贈与を相続扱いとする
今回、上記のような改正が見られるかと注目されていたものの、結果は先送りとなりました。
税制改正はいつから?
税制改正は、新年度より施行となります。つまり、2022年度の税制改正の内容が実際に適用となるのは原則2022年4月1日からです。
ただし、住宅ローン控除については1月1日時点に遡って控除されるようになる見通しです。2022年に入居された方は2023年の確定申告で住宅ローン控除の申請をすることとなりますが、2022年4月1日以前の入居でも2022年以降の入居であれば今回の税制改正による住宅ローン控除の要件が適用となります。
「税制改正大綱」は2021年12月10日に発表され、この大綱に沿って税制改正案がまとめられ、通常国会に提出されます。
住宅ローン控除の縮小など大幅改正に(まとめ)
- 控除率「1%」から「0.7%」に引き下げ
- 住宅の性能によって上乗せ措置が講じられる
- 控除期間「13年間」は据え置き(延長3年間も控除率は変わらず)
- ローン残高の上限額が「4,000万円」から「3,000万円」に縮小
- 所得制限が「3,000万円以下」から「2,000万円以下」に引き下げ
- 中古住宅の築年数要件が緩和
2022年度税制改正は、これから不動産売買する方に大きな影響を与えるものとなりました。住宅ローン控除の期間延長が据え置かれたものの、控除額は相対的に縮小。2022年の減税効果は、2021年と比較して半減近くにまで減少となる住宅もあります。
ただし、今回の改正は、中古住宅を売買する方にとっては朗報ともいえるかもしれません。これまでの住宅ローン控除では、木造が築20年、耐火構造が築25年という築年数要件がありました。それが「昭和57年以降に建築された新耐震基準の住宅」に緩和されたことにより、築20年、30年……の中古住宅の需要が上がる可能性も考えられます。